熱負荷の算出

目的とする被冷却対象を冷やすのに『どれだけの熱量を取り去れば良いか』を算出します。発熱を伴う被冷却対象がある場合を除いて、一般的には被冷却対象が冷えることによって、『周囲の環境からこの被冷却対象に侵入してくる熱量』を考えれば良いことになります。

A.冷蔵庫のような筐体の冷却の場合。

閉じられた空間の冷却なので、断熱材の熱伝導度と厚みから断熱材部分の熱抵抗を算出します。これに筐体の外側と内側の熱伝達による熱抵抗を加えて、総熱抵抗とします。

B.断熱のない(できない)構造物の場合。

被冷却対象の表面積から対流熱伝達による熱抵抗を算出します。

C.流体(液体や気体)の冷却の場合。

入口温度から出口温度までを所定の時間(流量)で冷却するのに必要な能力は、流体の比熱密度、流量、温度差の積で算出します。流量によっては非常に大きな冷却能力を要することになり、ペルチェモジュールでの対応が現実的でない場合もあります。また、冷えた流体の配管の途中では、周囲から侵入する熱量も加わるため、前項Bも考慮してください。

効率

ペルチェモジュールにもエネルギー効率が,COP(Coefficient Of Performance)という言葉で定義されていて、別名=成績係数とも呼ばれています。これはモジュールに与えられた投入電力(P)に対し、どれだけの仕事(=吸熱量Q)をしたかという比率、つまり(Q/P)ですが、現実的なペルチェモジュールの応用分野では、非常に小さな値になっていることが多く、小型冷蔵庫などでは(一般的には)0.2程度です。

成績係数の最大値(COPmax)は、電流値と温度差により一義的に決まります。しかし、電流値と温度差が小さい領域側でCOPは最大となるため、現実的ではありません。実際の応用は、大きな温度差や吸熱量も大きい方向に向かっているからです。従って、理論的な効率の最大値(COPmax)を、特に意識する必要はありませんが、少しでもCOPを高くするためには、何と言ってもモジュール両側の『熱交換能力を上げる』ことが一番重要となります。

選択

必要な冷却能力に応じてモジュールを選択します。最大吸熱量は指標として参考にはなりますが、実際には温度差が大きくなり吸熱量が小さくなるところで使用されるため、結果的に最大吸熱量の10%~30%程度で使われる例がほとんどです。余裕を持って選択してください。現実的には、動作電圧やモジュール寸法などにも配慮が必要なため、特性図を参照しながら決定します。

吸熱量が小さく温度差を取りたい応用の場合には、カスケード(多段)型を選択するという選択肢もあります。下記の最大温度差を指標としてください。一般的にモジュール内部の温度差が50deg程度の場合には、1段(シングル)モジュールで対応しておいた方が賢明です。

最大温度差(Th=27℃)
1段モジュール 68~70℃ FPH1/FPM1シリーズ
2段モジュール 85~95℃ FPK2シリーズ