信頼性・寿命を決定する半田接合部

ペルチェモジュール(素子)は、多数のP型およびN型のBiTe熱電素子が、セラミック上に形成された銅電極に交互に半田接合されている構造になっています。ペルチェモジュール(素子)の半田接合部の数は、よく使われる127対のモジュールの場合508ヶ所もあります。リード線の部分も加えると計510ヶ所もの半田接合部を有しています。電気回路は直列なので、この510ヶ所の内の1ヶ所だけの半田接合部の寿命が、ペルチェモジュールの寿命を決定することになるのです。

代表的な故障原因

ペルチェモジュール(素子)の故障原因は、応用商品への使用条件によって異なります。代表的な故障原因は表のとおりです。また、各故障原因の詳しい説明もご参照ください。

故障原因 現象 発生条件 対策
熱サイクル疲労 素子と電極の接合部または熱電素子自体に亀裂が発生・進展し、最終的に焼損し、通電不能となる。 熱サイクル時の最大温度差(・T)が大きかったり、また熱サイクルの頻度が高い機器 GL構造
腐食 電極接合部はんだ、リード線、半田などが腐食し、通電不能となる。 結露水などの水がペルチェモジュールに浸透する様な構造をもった機器。 耐湿シール
マイグレーション
(ショート~断線)
結露状態で熱電素子/電極接合はんだが電極間でマイグレーションを起こして徐々に内部抵抗が低下し、最終的に冷却不能になる 結露水などの水がペルチェモジュールに浸透する様な構造をもった機器。 耐湿シール
素子の結晶不良 熱電素子の結晶成長方向に沿った劈開面が大きく傾いている場合、熱応力によって熱電素子が劈開すると、ジュール熱によって焼損する。 熱電素子の結晶成長方向に沿った劈開面が大きく傾いている熱電素子が混在した場合 QCの徹底

熱サイクル疲労について

ペルチェモジュール(素子)の故障では最も一般的で、熱電素子と電極とを接合している半田層や接合部付近の熱電素子自体に発生します。ペルチェモジュール(素子)は吸熱側(低温側)と放熱側(高温側)との間に温度差(△T)を生じさせて使うデバイスなので必然的に熱応力が発生します。熱応力が最も高くなるペルチェモジュール(素子)の角隅部に位置する熱電素子または接合部に熱サイクル疲労亀裂が最初に発生し次第に進展していきます。亀裂の進展に伴って亀裂表面が酸化してこの部分の電気抵抗は増大し、ジュール熱の急増によってますますこの部分の温度が上昇し、ついには焼損もしくははんだおよび熱電素子が溶融して断線に至ります。

腐食について

室温より低い温度に制御する必要のある機器では必ず結露現象が発生します。結露した水がペルチェモジュール(素子)内部に滞り、まずはんだを腐食します。半田付け部分は異種金属同士が接触しており、半田成分が電気化学的に最も卑であるため優先的に腐食が起こります。腐食がさらに進行すると銅電極が腐食することもあります。いずれにしても最終的には回路がオープンとなり、寿命に達します。

マイグレーション(ショート~断線)について

腐食と同様の、結露する使用条件で発生します。結露水が電極間で連続していると、電極間に存在している電位差によって半田成分が溶出移動し、結露水中の金属イオン濃度が高くなると電極間のセラミック上に析出を起こします。この溶出移動と析出を繰り返すことによって電極間にショート回路が形成されます。これによってペルチェモジュール(素子)の内部抵抗は徐々に低下し、冷却能力も次第に低下します。熱電素子と電極とのはんだ接合断面積が次第に小さくなると、今度は電気抵抗が次第に増大してジュール熱が増加し、ついには焼損もしくは接合部が溶融して断線し、寿命に達します。

素子の結晶不良

熱電素子の結晶成長方向に沿った劈開面が素子に電流を流す方向に対して大きく傾いている場合、この劈開面が熱応力や機械的外力によって劈開を起こすと、電極との幾何学的な位置関係によっては電気回路の分離が素子部分において発生し、劈開面に電気スパークが起こったり、あるいは著しいジュール熱によってこの部分が溶融し断線することがあります。